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Jaco Pastorius(ジャコパストリアス)

ベースをやっていてジャコパストリアスの名前を知らない人はいないだろう。
		
		
私のジャコとの出会いは高校の頃。当時ビリーシーンに夢中で、他にもテクニカルなベーシストはいないかと探していたところ、教則本に「ジャコパストリアスの肖像」が紹介されていた。
そんなに期待もせずに借りてみたのだが、家に帰ってCDプレイヤーでいきなり「Dona Lee」が流れた時はぶっ飛んだ。とにかく、衝撃的すぎて呆然とした。今まで聴いたことのないような速弾きに、超絶的なソロ。あれ程の衝撃はこれからの人生でも経験することはないだろう。


多分私と同じような経験をした人も多いのではないか。


しかし誤解してはいけないのがジャコは決してテクニックだけのベーシストではないという点である。あの時点では最高峰のテクニックではあったのだろうが、現代ベース界にはジャコを凌駕するびっくりテクニシャンはチラホラいる。
にもかかわらずジャコは今でもベース界に多大なる影響を与え続けている。
マーカスミラーはジャコの影響から2年間抜けられなかったと言うし、若手で言うとアドリアンフェローなんかは明らかにジャコの影響にどっぷり浸かっている。


それはフレットベースを用いたウッドベース的な音色、ハーモニクスプレイ、R&Bにおける16分の使い方、フレージング、タイム感、ソロにおける超絶的テクニック。
ジャコはこの全てにおいて誰もが真似したくなるような独特な感覚を持ち合わせている。


テクニックだけ優れていたり、テクニックはないがグルーヴが気持ちいい、など一つのことに特化したベーシストはいるがジャコのように全てにおいて独創的なプレイをしてくるベーシストはなかなかいない。


それではジャコの特徴を名盤「ジャコパストリアスの肖像」から解説していきたい。

1.Dona Lee
パーカスとのデュオ演奏ですが、とにかくその圧倒的なテクニックは衝撃。しかし注目すべきはフレットレスでありながら音程もしっかりしていて、かつ音の粒の揃い方が尋常ではない。そして音も美しい。ジャコのような音色でソロを弾くのはベース界における一つのスタンダードですね。
ベーシストは絶対にこれを聴かなければいけない。

2.Come On, Come Over
一転してボーカルをフィーチャーしたファンクナンバー。この曲を聴くとジャコはグルーヴも大事にしていることに気づく。ジャコの16分で細かく、手数多めに弾くスタイルも数多くのフォロワーを生み出しています。そして相変わらず音の粒の揃い方がすごい。

3.Continuum
ソロベースで奏でるジャコの代表曲の一つ。ジャコのベースのウタイ方を聴くには絶好の曲。ジャコはフランクシナトラの研究をよくしたというだけあって、メロディを弾くときすごく「ウタッている」。スケールの大きい曲で思わず感動してしまうような曲である。ヴィクターベイリーもコピーしており、この曲もまたベースをやっている者は避けて通れない。

4.Kuru/Speak Like A Child
ハービーハンコックのピアノも聴ける、ストリングスが多く入っている曲。シーケンスかと思うくらい精確なベースライン。ハービーハンコックのソロも大きくフィーチャーされているが、それでもジャコのベースが耳に入ってくる。ジャコのベースの特徴はソロを弾いていなくても自然と耳に入ってくることである。だけど決して浮いているということではなく、むしろ曲にとって必要不可欠なのである。やはり支配力が圧倒的なのであろう。その点ではスコットラファロにも通じるように感じる。

5.Portrait Of Tracy
ハーモニクスをふんだんに使ったジャコのソロベースパフォーマンス。本当になんでもできるんだな。。。そしてハーモニクスの使い方も、使いたいから使っているのではなく、あくまで曲をよくするために使っているのである。ここまでハーモニクスだらけにしているにも関わらず、この表現が唯一と思わせるジャコの作曲家としての才能は、やはりとてつもない。決して曲芸にはならず、どこまでも音楽的であろうとする精神がみられる。

6.Opus Pocus
ここでまたジャコの16分が多分に聴ける曲。このアルバムをここまで聴くと、ジャコの16分における手癖に気づく。ジャコを聴けば聴くほどわかるが、ジャコはわりと手癖を多用する。そしてその手癖もまた、なんとなくコピーしてみたくなるようなものばかり。。。ジャコは耳に残るフレーズを作ることに本当に長けている。だからこそ今でもフォロワーが後を絶たないのであろう。

7.Okonkole Y Trompa
ハーモニクスを用いた執拗なシーケンスフレーズ。ずっと同じフレーズを弾いているのだが、それでもなにか惹き付けるものはある。ただかなり濃厚なアルバムだけあって、ここまでくると聴く方も体力的にきつくなってくるのが正直なところ。アルバム通じて「捨て曲」がないというのもまた大変なものだなと実感させられる。

8.(Used To Be A)Cha-Cha
ミシェルカミロもカバーしているラテンナンバー。ここでも後のライブ版などでよく聴かれるジャコの手癖フレーズが出てくる。そしてソロも聴かせるが、実は曲中におけるベースソロはソロベースなどを除くとこの曲が初めて。ここまでベース中心のアルバムでありながら、気づいたらベースソロはほとんどないというのも驚きである。ハービーハンコックをはじめする大物がソロをとりますが、相変わらずジャコのベースが耳に入ってくる。この大物達と対等、もしくはそれ以上に渡り合っているジャコの器の大きさを感じられる。

9.Forgotten Love
ベースが入っていない、ピアノとストリングスによる美しい曲。ここまでの曲が全部内容が濃すぎて、この曲がなかったら疲れたままアルバムを聴き終えることになります。しっかりと休憩をとってアルバムの余韻に浸るのに最適。


このようにとにかく内容がとてつもなく濃いアルバム。ジャコのベーシストとしての実力と同時に音楽家としての才能を聴けるアルバムである。音楽としても非常に優れているとんでもない傑作アルバムなので、ベーシストはもちろんそれ以外の音楽ファンにも是非聴いて頂きたいアルバムです。ただ全部聴くのは神経をすり減らします。これがデビュー作とは恐ろしい。。。。





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